あんぱん22週ネタバレ「愛するカタチ」あらすじ予告
目次
105話:1964年秋、東京
(1964年の秋、日本中が東京オリンピックの熱気に沸き立つ中、のぶとタカシは、二人きりのささやかな部屋で、一台の白黒テレビを静かに見ていた。画面に映し出されるのは、国籍も人種も違う選手たちが、楽しそうに笑い合い、肩を組む閉会式の様子だった。テレビの砂嵐のようなノイズの向こうから、彼らの楽しげな声が聞こえてくるようだった。)タカシ:
「すごいなぁ、のぶちゃん。国とか関係なく、みんなが心から楽しんでいる。こんな風に、みんなが笑顔でいられる世界がずっと続けばいいのに。」
のぶ:
「ほんまやね…。平和って、こういうことながかもしれんね。二度と戦争にならんために、私たちに何ができるか、考えていこう。」
(二人は、テレビを囲んで固く手を取り合った。その手から、小さな決意と、未来への希望が伝わってくるようだった。)
1966年春、漫画家としての苦悩
(1966年春。タカシは「まんが教室」の先生や、作詞の仕事などで相変わらず忙しくしていた。しかし、お腹を空かせた人たちにあんぱんを配るヒーローの漫画は、どの出版社にも認めてもらえず、すっかり落ち込んでいた。柳井家の茶の間で、タカシは暗い顔で原稿を眺めている。)タカシ:
「良い話だと思うんだけど、なぜだろう…。どうして誰も、このヒーローに振り向いてくれないんだろう…。」
(そう独り言を呟くタカシの横顔には、寂しさが滲んでいた。漫画家としての理想と現実の間でもがき続けているタカシは、いつしか心に浮かんだ言葉を、まるで心の叫びのように詩として書き留めるようになっていた。)
第106話:詩集『ぼくのまんが詩集』
(五月十八日。のぶの誕生日。部屋には蘭子とメイコが、ローソクが灯された手作りのケーキを持ってやって来た。部屋中に甘い香りが広がる。)蘭子:
「のぶねえちゃん、お誕生日おめでとう!いつまでもお元気でいてね!」
メイコ:
「おねえちゃん、おめでとう!!!タカシさんと仲よう、幸せでいてくれるのが、うちの何よりの喜びやき。」
(賑やかな祝福の声に、のぶは顔を綻ばせた。タカシは、そんなのぶに、小さな包みを差し出した。それは、タカシが自費で出版した『ぼくのまんが詩集』だった。)タカシ:
「お誕生日おめでとう、のぶちゃん。これは、僕からささやかなプレゼントだよ。この詩はね、僕の周りの大事な人たちと…それから、いちばん近くにいてくれる、のぶちゃんのことを思って書いたんだ。みんな、ありがとう。」
(タカシの真っ直ぐな言葉に、のぶは感動で胸がいっぱいになった。)
第107話:心の響く抒情詩
(一週間後。タカシは、イラストの仕事を手伝っている八木の会社へ出向いた。応接間で待つタカシの前に、八木が興奮した様子で現れた。彼の手に握られているのは、蘭子が置いていったタカシの詩集だった。)八木:
「タカシ、お前に渡すものがある。これは…ただの詩じゃない。すべての人の心に響く抒情詩だ。人の心を揺さぶる、力がある。これを読んだ後、僕は何も手につかなかった。」
タカシ:
「八木さん…。」
(八木は、何か閃いた様子で、陶器の絵柄を指差した。そして、タカシの絵と詩を湯飲みや皿にデザインして売り出すことを思いつく。八木のアイデアは成功し、発売された陶器はなかなかの売れ行きとなった。その後も八木は、タカシにもっと詩を書くようにと、しきりに勧めてきた。心配そうなのぶの顔を見て、タカシは微笑んだ。)タカシ:
「大丈夫だよ、のぶちゃん。漫画を描く時みたいに、言葉がどんどん浮かんでくるんだ。これまで出会った人たち…みんなの顔が、僕の詩の源なんだから。」
(タカシは、あふれる言葉を書き留めていった。二日後、蘭子からタカシの詩を受け取った八木は、たちまちその詩の世界観に引き込まれた。)八木:
「よし、出版部門を作るぞ!最初の作品は、やないたかしの詩集だ!」
(後日、柳井家を訪ねてきた八木に、タカシは新たに書いた詩の数々を見せた。)八木:
「これは…すばらしい抒情詩で…メルヘンだ。」
タカシ:
「ありがとうございます。」
(八木はタカシに詩集のタイトルを考えるように促した。タカシが少し照れながら思いついたタイトルは…)タカシ:
「『愛する歌』です…。これらの詩はあまり世に知られることはないに違いない。けれども僕にとっては、愛する歌なんだという意味です。お恥ずかしい…。」
第108話:届いた想い
(八月上旬。無事に『愛する歌』が出版された。詩集は売れ行き好調で重版され、八木は第二集の発行も決めた。のぶは、嬉しそうに報告するタカシに、にこやかに語った。)のぶ:
「売れると思ってた。だって、こんなに分かりやすくてすてきな詩はないもの…。大人も子どもも、声に出して読みとうなる詩やき。」
(のぶの言葉に、タカシは感極まって言葉が出なかった。彼はのぶの温かい眼差しに、ただ感謝の気持ちを伝えるように、優しく微笑んだ。その頃、メイコは、健太郎が仕事の相談をしてくれないことに悩んでいた。タカシたちの家を遊びに訪れたメイコは、仲睦まじい二人をうらやましそうに見ていた。)メイコ:
「えいなぁ…。健太郎さんは仕事の話なんかしてくれません…。それに、うち、何年も名前で呼んでもらえんがです…。うちは、健太郎さんのママやないのに…。」
(メイコの寂しさを感じたのぶは、彼女を連れて蘭子の部屋へと向かった。蘭子は、珍しく真紅の口紅を塗っていた。口元に鮮やかな色がのり、いつになく艶っぽく見えた。)メイコ:
「姉ちゃん、恋でもしちゅう?」
(メイコの言葉に、蘭子は動揺しながらも否定した。メイコは、戦後で一番美しかった頃、口紅も塗れず、ワンピースも着られなかったことを寂しそうに嘆いた。)メイコ:
「もっとおしゃれして、健太郎さんと町を歩きたいが…。」
(ある朝、柳井家に立ち寄った健太郎に、タカシとのぶは、メイコの寂しさをそれとなく伝えた。慌てる健太郎に、のぶは『愛する歌』の「えくぼの歌」のページを開き、差し出した。)のぶ:
「『泣きたいとき 私はがまんするの 私は泣くのが似合わない 私はえくぼがあるから』…これ、メイコの詩だと思う。」
(のぶの言葉に、タカシも続けた。)タカシ:
「その詩は、メイコさんみたいにいつも笑ってる子の、心の奥にある、悲しい気持ちを書いたんだ。」
(一方、おしゃれをして銀座のカフェにいるメイコは、一人で「えくぼの歌」を読んでいた。彼女の大きな瞳に、切ない光が宿っていた。そこに、健太郎が息を切らして駆けつけた。)健太郎:
「…俺、ほんとんふうたんぬるか男でごめん。」
(健太郎は、メイコの手をぎゅっと握りしめて続けた。彼の目には、のぶとタカシの言葉が蘇っていた。)健太郎:
「メイコ、泣きたいときは、俺ん胸で思いっきり泣いてほしかとよ。」
(二人は、お互いの気持ちを確かめ合い、手を取り合って仲よく歩きだした。)
第109話:あんぱんおじさんの誕生
(タカシの詩集は、多くの人の心にしみわたっていった。やがて、タカシの元にはファンレターが届くようになる。その中の一通は、小学四年生の北里佳保からだった。丸っこい、可愛らしい文字で書かれた手紙には、詩の感想と、タカシへの感謝が綴られていた。)手紙:
「やないたかし先生、はじめまして。私は小学四年生の北里佳保です。やない先生の詩のひと言ひと言に、とてもとても感動しました。」
(かわいらしい文面に、タカシは嬉しくなり、返事を書いた。そして、「いつでも遊びにきてください」と添えた。数日後、佳保は祖父・砂男と一緒にタカシの家を訪ねてきた。彼女は緊張しているのか、少しぶっきらぼうな態度だった。)タカシ:
「詩集の感想、聞かせてくれるかい?」
佳保:
「今まで詩は難しいものと思ってたけど、この程度なら私にも書けるかもって思って、うれしくなった。」
(次々と失礼な物言いを続ける佳保は、タカシの机の横に貼ってあった、あんぱんを配る太ったおじさんの絵をじっと見つめていた。のぶが佳保と庭へ出ると、ちょうど蘭子が帰ってきた。佳保の相手を蘭子に任せ、のぶが部屋に戻ると、砂男がタカシに謝っていた。)砂男:
「…あの子は最近、つらいことがあったんです…。大好きだった父親を亡くして…。それをあなた方に見せまいとして、虚勢を張ってるんだと思います。」
(砂男は、タカシに深く頭を下げた。佳保は泣いてばかりいたが、タカシの詩集を読んで少しずつ元気になり、初めて自分から外に出かけたいと言い出したという。砂男は、タカシに深く頭を下げた。)砂男:
「あなたの詩には、喜びの裏に、どうしようもない悲しみがにじんでいる…。きっと、大変なご経験をされたのでしょう…。」
タカシ:
「…争うことはやめて…心の中のうれしさを、また悲しみを、寂しさを誰かと共感したい…。それが、僕の詩や絵になるのかなぁ…。こうして、佳保ちゃんのような、誰かに届いてくれたら…おののくほど、僕はうれしいんです。」
(タカシの言葉は、彼の創作の原点を示していた。蘭子と佳保は、好きな詩が同じだと意気投合し、楽しそうに話していた。そんな佳保に、タカシはサインと彼女の似顔絵を描いた色紙を渡した。裏には、のぶに勧められて描いた、あんぱんを配るおじさんの絵も描かれていた。)佳保:
「このおじさん、カッコ悪いけど、なんか好き。」
(佳保の無邪気な言葉に、タカシは胸が熱くなった。タカシの小さなあんぱんおじさんは、一人の少女の心を救っていた。)
第110話:やさしいライオンの物語
(1967年5月。のぶとタカシは、二人で暮らしていた長屋から、四谷の新しいマンションへと引っ越し、同居を決心したはた子が大きな荷物を持って上京してきた。)はた子:
「これからは、結太郎の思い出をたどって、あちこち旅行したいが。ここを拠点に、色々出かけようと思うちょるがよ。」
(はた子の言葉に、のぶは嬉しそうに頷いた。新しい生活への期待に胸が膨らむ。ある日、タカシはラジオドラマの脚本を翌朝までに書かなければいけなくなり、以前書いた『やさしいライオン』をアレンジすることを思いつく。それは、母を失った赤ちゃんライオンのブルブルと、子どもを失った母犬・ムクムクの物語だった。ムクムクに育てられたブルブルは、大きくなってムクムクと別れ、やがて一緒に過ごした日々を忘れてしまう。後にブルブルは、ムクムクが歌う子守歌を耳にして彼女を思い出し、二匹は再会するが…。タカシは、育ての母である伯母の千代子と、実の母である登美子がこの話を聞いたらどう思うか気にしていた。のぶは、そんなタカシの背中を優しく押した。)のぶ:
「タカシさんが書きたいと思うなら、書いたほうがえいで。大丈夫。」
タカシ:
「うん、わかった。ありがとう、のぶちゃん。」
(タカシは、以前は悲しい結末だったところを書き直し、脚本を仕上げた。タカシの脚本はラジオで放送され、タカシの二人の母親(千代子と登美子)、八木、蘭子、手嶌たちの耳にも届いていた。彼らはそれぞれの場所で、タカシが紡いだ愛の物語に耳を傾けていた。
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